手間と憧れと。刺繍の半衿

手間と憧れと。刺繍の半衿
「刺繍の半衿って、そういうことだったのね。着物なんて詳しくないから、打ち合わせの時に半衿は刺繍にしますかって聞かれたんだけど、普通のでいいですって答えちゃったの。綺麗ね。」

無理を言って入れてもらった花嫁さんの控え室。花嫁のななさんは、着付師が手際よく白無垢を着せつけていくのに身を任せながら、私の乱菊模様の刺繍半衿を見て褒めてくれた。

ななさんの結婚式の前日。着物を着るようになってから随分経って、刺繍や染めの半衿に心惹かれながらも、結局いつも無地の白半衿だったな、なんて思いながら初めての刺繍半衿を縫い付けることに。

長いこと憧れていた刺繍の半衿は「よし。」と針を手にしてからノンビリ1時間。ようやく半衿は長襦袢に収まる。刺繍の半衿を選んで買って、アイロンをあてて折りジワを取る。まずは長襦袢の外側から、そして内側はシワがよらないように少し半衿を引っ張りながら縫い付ける。

やっぱり手間だとは思うのだけれど、縫い仕事をしている時間は案外楽しくって、着てみればパッと華やかになる顔周りにそれならこの手間も悪くないって思ってしまう。


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