にぎにぎ、お酉さま

酉の市

あちらこちらから聞こえる威勢のいい掛け声。馴染みの店で熊手を選ぶ人たち。大判小判で飾り付けた縁起熊手が壁やら天井やらを埋め尽くし、ほの暗かった夜の寺社にはぽぉっと大きなあかりが灯って大賑わい。11月、酉の日の午前零時に鳴らされる鐘と共に始まるのは「酉の市」です。



酉の市
歌川豊国 「十二ケ月ノ内 霜月酉のまち」

その昔、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際に勝利祈願をしたといわれる鷲神社(おおとりじんじゃ)。無事戦いに勝利した日本武尊は再び鷲神社を訪れ、社前の松に武具の熊手を立て掛け、お礼詣りをしたそうです。それが11月の酉の日。そんな伝説から、日本武尊は鷲神社の祭神となり、11月の酉の日は鷲神社の例祭日となりました。はじめは酉の祭(とりのまち)と呼ばれた例祭には、だんだんと市が立つようになり、今に続く酉の市となりました。

12日毎にやってくる酉の日。2018年の11月、酉の日は3回やって来ます。それぞれ一の酉(11月1日)、二の酉(11月13日)、三の酉(11/25)と呼ばれ賑やかに酉の市が立ちます。


酉の市

関東地方を中心に、鷲神社や大鳥神社をはじめとするいくつかの寺社で行われている酉の市。日本最大の規模を誇るのは浅草・鷲神社。これに新宿の花園神社、府中市の大国魂神社の酉の市を加えて関東三大酉の市と呼ばれています。(写真は新宿花園神社の酉の市)


酉の市

酉の市


この酉の市だけで買えるのが縁起熊手。金運や幸福を〝かきこむ〟この縁起熊手を求めて、商売人をはじめとする多くの人たちが詰めかけます。それぞれの熊手に値段はついていないので、価格はお店の人との交渉次第。好みのデザインや予算を伝えて、値切ったり値切られたり…、交渉がまとまれば、お店の人による手締め(三本締め)となります。

「商売繁盛、家内安全を願って〜、ヨーォ!そーりゃっ!そーりゃっ!」。威勢の良い手締めで送り出してもらったら、境内にいる間は熊手を掲げるように持ち歩き、福をいただいて帰りましょう。


酉の市

おかめや鯛、実りを象徴する稲穂などで賑やかに飾り付けられている縁起熊手は、“化粧”と言って大入り袋や来年の干支の人形などでさらにおめでたく仕上げてもらえます。これも交渉次第。お店の人にお願いしてモリモリに仕上げてもらった縁起熊手は、堂々たるものです。

家に持ち帰った縁起熊手は、玄関なら入り口に向かって、室内なら北以外の方角に向け、高いところに飾って福を呼び込みます。熊手のサイズは“商売や家が栄えていきますように”と願いを込めて、毎年少しずつサイズを大きくしていくのがお約束。とはいえ値段や大きさの都合もあるので、小さくしなければいいようです…


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