お願いあれこれ、ゆかたのお誂え

ゆかたのお誂え

今年はゆかたを誂えよう。年明け早々に心を決めて出かけた竺仙さんの展示会。ずらり並ぶ反物の中から選んだのは、伸びやかにひまわりが描かれた奥州小紋です。大柄なだけに、柄の位置でゆかたの印象は大きく変わります。和裁士さん曰く、実はゆかたの仕立てが一番難しいのだとも。和裁士さんにあれこれお願いしながら“こんなゆかたが欲しい”を叶えてもらいました。

ゆかたのお誂え

奥州小紋はしなやかな綿紬に、型を使って引き染めで柄付けをした竺仙さんオリジナルの反物。季節を問わない柄ゆきなら、下に長襦袢を着て足袋を履き、着物風の着こなしで春の終わりから秋まで長く着られる生地ですが、今年欲しかったのは“ゆかた”。あえて夏ひとときに限ったひまわり柄に決めました。

ゆかたのお誂え

私から和裁士さんにお伝えしたのは、寸法と“この辺に柄が出たらいいな”というスケッチ。上前の胸にメインの柄が欲しいこと、左右でひまわりの位置がズレるように散らして欲しいこと、胸元の柄と掛襟の柄がぶつからないこと、この3つをお願いしました。

一方和裁士さんからは、細かな寸法確認の他に幾つかの質問が届きました。
Q1:居敷当(いしきあて)はつけますか?
Q2:衿の仕立て方のご希望は?(広衿かバチ衿か)
Q3:手入れは自宅ですか?

A1:居敷当は力のかかるお尻の部分を補強する裏地のこと。ゆかたの反物が透け感の強い場合は透け対策にもなります。そんなにハードな着方はせず、透け感のない生地だったので居敷当はつけませんでした。

A2:着物風の着こなしも似合う奥州小紋なので広衿に仕立てる方も多いようですが、今回はゆかたにこだわってバチ衿に。

A3:手入れについて聞かれたのはなぜだろうと思いましたが、自宅で洗うのであれば乾きやすいように縫込みの始末は織り込まずに留めるだけにするそうです。

寸法はもちろん、どんな着方か、どんな手入れか、一人一人の着物事情に合わせて仕立ては微妙に変化していくものだと改めて実感です。
裾つぼまりになりにくい、胸にシワがよってしまうなど、体型による着付けの悩みを仕立てが解決してくれることもあるので、寸法と一緒に着付けの悩みも和裁士さんに相談してみるとアッサリ解決(!)なんてこともあるかもしれません。

ゆかたのお誂え

写真は身頃と袖を粗裁ちした状態です。着る時に衿を抜くと柄は全体的に少し上がるので、ちょうど上前の良い位置にひまわりが出そう…なのですが、実は上前の胸元のひまわりは下を向いているんです。

ゆかたは上下入り乱れた柄付けが多く、胸元など目立つ位置には普通上向きの柄を配置します。ただこの位置にひまわりが欲しかったことと、ここに掛け衿がついて、さらに着付けをしてしまえば柄が下向きなことは目立たないので、今回はこのまま進めることに。

ゆかたのお誂え

仕立て上がったゆかたがこちら。こだわった胸元のひまわりも希望通りの場所で顔まわりが華やかです。上前、衽はもちろん、特に希望は伝えていなかった袖もバランスよくひまわりが配置されて大満足の仕上がりです。


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